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親が子を育て、暮らしを営む。
その子が新たに生まれた子を育て、世代が移っていく。
それはまるで四季のように。
夏が来て冬が来る。冬が去るとやがてまた夏が来る――。

深圳(シンセン)の貿易会社で働く佳妮(ジャーニー)は、恋人との結婚に踏み切れずにいた。理由は、まだ自分たちの持ち家がないこと。中国では昔からそう言われてきたように、家がなければ結婚できないと考えている佳妮は、価値観の違う恋人からのプロポーズに応えられずにいるのだった。
そんな時、生き別れになっていた実父が亡くなったとの知らせを受ける。葬儀に参列するため生家を訪ねた佳妮は、実は自分には他に2人の姉と弟がいて、次女と自分が養女に出されていたことを知る。
海が望めるのどかな村で家族の温もりを味わいながら、母や姉たちのこれまでの暮らしと、さまざまな思いを知っていく佳妮。しかし、母が佳妮たちを捜した裏には別の理由があったことを知り…。
『夏が来て、冬が往く』は、ある家族の人には言えない事情を語りながら、中国の特殊な事情や社会の変化を浮かび上がらせる。
結婚しない選択をする女性が増え、少子高齢化の一途をたどっている現在の中国。そこには、失業率の上昇など将来への不安の他に、1980年頃から導入された「一人っ子政策」(2015年に撤廃)で女性より男性の数が多いという背景もある。男尊女卑の考え方が根強い地方では女児の誕生は歓迎されず、養女に出されたケースも多かったという。
これが初の長編映画となる彭偉(ポン・ウェイ)監督は、これまであまり映像作品で取り上げられることのなかった、こうした中国社会のひずみにスポットを当てる。中国で実際にあった数件の家族のエピソードを盛り込み、多くの女性たちが経験していながらも大きな声では語ってこなかった心の傷に優しく寄り添う。中国で映像制作の仕事に従事し、日本大学芸術学部映画学科で学んだ経歴を持つ彭監督。本作は、撮影や脚本制作は中国で、仕上げ作業は日本で行うという中日共同作品として完成された。佳妮が暮らす街の様子が撮影されたのは、近代化が著しい広東省の大都市・深圳。家族が暮らす村の撮影場所には、青い海と赤いレンガ造りの屋根が並んだ風景が美しい青島が選ばれた。青島を有する山東省は、孔子や孟子、諸葛孔明らの生誕地として知られ、古代より中国の豊かな文化を育んできた土地。この2つの地域が持つシンボリックな意味も興味深い。
どんな家族にもひずみがある。佳妮と姉たちが経験してきたことは、あまりにも理不尽だ。しかし、彼女たちは自分自身を縛り付けていたこだわりや価値観に向き合い、悲しみも苦しみも受け止めて前に進む。この映画は割り切れない感情を丸ごと包み込み、これからを生きようとする女性たちの背中をそっと押してくれる。


新田理恵(ライター)

Story

広東省に住むジャーニーは、結婚を機に家を購入するかどうかで恋人・ジーユエンと意見が合わず、彼からのプロポーズの返事を先延ばしにしていた。ある電話をきっかけに、ジャーニーは生家の家族と連絡が取れ、実父の葬儀へ参列することになる。初めて会う母、初めて会う二人の姉と弟。長女のウェンフォンは生家で過ごしてきたが、次女のシャオリーもまた養子に出されていたことを知る。
三姉妹は互いの心を癒しながら日々を過ごす。時折、ジャーニーは幼い頃の養父とのささやかな時間を思い出し、家族や家のことを改めて考え始めるが、母が自分を探したのは、別の目的があったことを知る・・・。

監督 彭 偉(ポン・ウェイ)

1984年7月19日生まれ、中国 黒竜江省出身。
(黒竜江省は、中国最大の食糧産地、平原は景色が美しく、
ロシアに隣接しており、最低温度は零下50度を記録したことがある。
日本大学芸術学部映画学科卒。中国にて映像制作に携わる。
06年、短編映画『10元の偽札』が第7回北京大学映画祭に入選。
18年、短編映画『雪の味』が日本大学芸術学部湯川制賞を受賞。
22年に撮影した本作が長編初監督となる。
東京国際映画祭2023「東京・中国映画週間」新鋭監督賞受賞。

▼彭偉監督オフィシャルインタビュー
https://note.com/natsu_fuyu_movie/n/n77663bb4ac6a

雪雯 シュエ・ウェン

林佳妮(リン・ジャーニー)役
*三女

曽韵蓁 ゼン・ユンジェン

鄭文鳳(チョン・ウェンフォン)役
*長女

陈昊明 チェン・ハオミン

張曉莉(チャン・シャオリー)役
*次女

楊涵斌 ヤン・ハンビン

林小宝(リン・シャオバオ)役
*ジャーニーの養父

王亜軍 ワン・ヤージュン

藩三喜(パン・サンシー)役
*生母

孫序博 スン・シューボー

姚志遠(ヤオ・ジーユエン)役
*ジャーニーの恋人

劉冠宜 リウ・グワンイー

林佳妮(リン・ジャーニー)役
*ジャーニーの子ども時代

王馳 ワン・チー

鄭文龍(チョン・ウェンロン)役
*長男(ジャーニーたちの弟であり、鄭家唯一の息子)

牟纹萱 ムー・ウェンシュエン

小雨(シャオユー)役

石榴 シー・リウ

林佳雪(リン・ジャーシュエ)役 *林家でのジャーニーの妹

一人ひとりの人間の心に癒しがたい傷を残してきた文化と、
忘れられない痛みをそっと鎮めて
くれた風習や営みが対照的に映し出される。
現代中国に生きる女性の再会を描き、
季節が移ろうように自然の流れに委ねながら、
この映画は彼女たちの再生を促すのではなく、
静かに温かく寄り添う。

池松壮亮 さん(俳優)

作品はとても面白く拝見しました。
中国のお葬式にまつわる風習も大変興味深かったです。
長編一作目としては脚本も良く練られています。

是枝裕和 さん(映画監督)

映画を観て初めて知る事は多い。
「中国は一人っ子政策」なのに、
実際には様々な「例外規定」が存在し、
当然そこには想像もつかないドラマがある。
亡くなった実父の葬儀の為、
残された母の元に四人の兄弟姉妹が集う。
生まれて直ぐに里子に出された
三女の長年にわたる蟠りが解れてゆき、
新しい自分と家族を見つけてゆく過程が、
美しい生まれ故郷の光に包まれて優しく丁寧に描かれる。
彭偉監督のテーマ“人生はいつも残念の中で円満を味わう”を
しっかりと味わった。心地好い映画でした。

滝田洋二郎 さん(映画監督)

「男尊女卑」と言う差別思想によって、
女性が社会で生きる難しさを痛切に描いた作品。
現在においてもどの国にも蔓延る問題だと改めて感じました。
そんな世の中で強く歩んでいく三人姉妹。
男性社会に揉まれ我慢やプレッシャーを感じる日々でも、
生きるため 食べるため 子供のために懸命に生きていく姿が
繊細に描かれており、女性の強さを感じました。

大原櫻子 さん(俳優、歌手)

美しい、微かなひずみが映画芸術になりました。

栗原小巻 さん(女優)

複雑な生い立ちを持つ佳妮が、実父の葬儀に参列するため生家に戻る。
赤レンガの美しい海辺の街並み、
老いた実母と姉弟たちとの雪解けともいえる心の交流、
そしてこの土地に伝わる驚くべき豊かな風習……。
かつての農村部に多く見られた男尊女卑や養子のならわしという
重いテーマを扱いながらも、その範疇にとどまらない魅力的な映画であり、
中国の知られざる一面を描き出した意欲作。
終盤に挟み込まれた珠玉のシーンに魂が揺さぶられる。

小林さゆり さん
(フリーランスライター、翻訳者)

家族の話であり、生物学上”女”に生まれてしまった人たちの
葛藤の話である。作中映る街が美しくて、
中国のとある地域での独特の伝統やしきたりが面白い。
でも、全く別の土地や文化の中で生きてきたはず
中国の現代女性たちの悩みが、
日本で生まれ昭和・平成・令和を生きてきた一女性である
私と想いが繋がって、抱きしめたかった。
「家族って、好きとか嫌いとかそういう問題じゃない」と
核心をついてくれるような、この作品の温度感が、大好きだ。

内田慈 さん(俳優)

名もない家族のささやかな物語から、
今の中国が抱える数多の課題が詳らかになる。
緻密に構築された脚本と演出、
人生の機微を繊細に演じ切った俳優陣に脱帽!
静かにゆっくりと心が揺さぶられ、また人間が愛おしくなる。

船越英一郎 さん(俳優)

幼時に養子に出された女性が、
実父の葬儀に訪れた生家での三日間に、
過ぎ去った歳月すべてが凝縮されていて、切なく胸に迫る。
『海街diary』を彷彿する美しい世界観のなかで、
厳しい人生の選択を見つめる監督の視点は、
あくまで穏やかで優しい。

本木克英 さん(映画監督)

知らないことばかりでした。
風習や家族は人を愛情深く包み込むが、
時に冷たく突き放すこともある。
人生は選択できることとできないことがある。
実に重いテーマを扱っていますが、
青島の風景と女性俳優たちの好演が映画を
美しいものにしていると思います。
石井裕也さん(映画監督)

石井裕也 さん(映画監督)

ゆったりと時が過ぎる美しい町に目を凝らすと、
そこに染み込んだ文化、風習、
そしてある家族の複雑な繋がりを観た。

青木崇高 さん(俳優)

幼くして養子に出された三女が実の父の葬儀で母と姉たち、
年下の長男がいる家を訪れた三日間。そこにある大学卒の三女や、
いまの日本の私たち女性には許せない男尊女卑の世界を背景に、
境遇の違う世界に生きる三姉妹に生まれる
肉親の血つながりの温かみが胸にしみる。
長男のこと、母の抱える痛み。
でもこれからはきっと今までとは違う明日が来る、
という思いが心に残った。

渡辺祥子 さん(映画評論家)

隣国の事を我々はどうみてるのだろうか?
敵?味方?勝者?敗者?

国民である前に歴史
「国家」としてみていないだろうか?

家族の距離感は誰も掴めない
家族って近いのに、とても遠くにいる。

彼等にはとても美しい暗闇を漂う「家族」を感じた。
一筋の光が繋ぎ止める「優しい遺言」

観終わったあと、
アナタが感じた隣国を誰かに共有したくなるはず。

サヘル・ローズ さん(俳優、タレント)

(順不同)

 エリア 劇場 公開日 TEL URL
 北海道 サツゲキ 1月3日 011-221-3802 https://www.cinemasunshine.co.jp/theater/sapporo/
 青森 シネマディクト 1月18日 017-722-2068 https://www.cinemadict.com/
 東京 新宿武蔵野館 12月27日 03-3354-5670 https://shinjuku.musashino-k.jp/
 東京 kino cinéma立川高島屋S.C.館 12月27日 042-512-5162 https://kinocinema.jp/tachikawa/
 神奈川 kino cinéma横浜みなとみらい 12月27日 045-264-4572 https://kinocinema.jp/minatomirai/
 栃木 小山シネマロブレ 2025年1月3日 050-3196-9000 https://www.ginsee.jp/roble/facility/
 栃木 宇都宮ヒカリ座 2025年1月17日 https://www.ginsee.jp/hikariza/
 静岡 シネマイーラ 順次公開 053-489-5539 http://cinemae-ra.jp/
 愛知 シネマスコーレ 順次公開 052-452-6036 http://www.cinemaskhole.co.jp/cinema/html/home.htm
 愛知 イオンシネマ豊田KiTARA 12月27日 0565-35-1751 https://www.aeoncinema.com/cinema/toyota/
 大阪 テアトル梅田 2025年1月3日 06-6440-5930 https://ttcg.jp/ttcg_umeda/
 京都 アップリンク京都 2025年1月3日 075-600-7890 https://kyoto.uplink.co.jp/
 愛媛 シネマサンシャイン重信 2025年1月3日 089-990-1513 https://www.cinemasunshine.co.jp/theater/shigenobu/
 福岡 kino cinéma天神 12月27日 092-406-7805 https://kinocinema.jp/tenjin/
 福岡 イオンシネマ戸畑 12月27日 093-871-1123 https://www.aeoncinema.com/cinema/tobata/